「うねり取り」と言えば林輝太郎先生です。
今回は先生の数ある書籍の中でも、うねり取りについて最も初歩的な内容が解説されている「うねり取り入門 株のプロへの最短コース」を読んでみました。
この「うねり取り入門」は、初版が1998年7月なので約24年前に発売された本です。
そのため、内容は現代の相場や取引環境とはだいぶ異なる点が多くなっています。
しかし、うねり取りとは何たるか、株式トレードの基礎を理解するには十分な書籍となっています。
この記事では、「うねり取り入門」の内容を要約しつつ、筆者の見解や現代の取引環境に合わせた解釈を紹介していきます。
- 「うねり取り入門 株のプロへの最短コース」を読むか悩んでいる
- 林輝太郎先生の取引手法の基礎を知りたい
- スイングトレード(うねり取り)の手法を増やしたい
という方には参考になるかと思います。
うねり取りとは?
うねり取りとは、一言でいうと「銘柄固定売買」です。
時価総額や出来高が多いプライム市場から1銘柄を選んで、3ヵ月(もしくは3の整数倍の月数)の上げ下げに注意して取引します。
林輝太郎先生は、うねり取りを「大雑把な波に乗る取引」と表現しています。
あまり細かい値動きを考慮せずに「3ヵ月下がってきたからこのぐらいで良いか」という感覚での取引です。
そのため、うねり取りはザラバ(平日9:00~11:30, 12:30~15:00)の値動きを見られない兼業トレーダーにおすすめできる手法です。
うねり取りの銘柄選定
うねり取りで選ぶべき銘柄について、明確に言及されています。
選ぶべき銘柄
うねり取りは、銘柄固定売買なので、1つ銘柄を選定しなければなりません。
銘柄選定は、以下の基準を全て満たす銘柄から行います。
- プライム市場
- 出来高が多い
- 時価総額が大きい
- 低位株(10万円以下の株)
①~③を満たすべき理由は、業績が安定していて、チャートの動きが緩やかで規則的なので、比較的予測を立てやすいからです。
④低位株を選ぶ理由は、「うねり取り入門」では名言されていません。
筆者の個人的解釈として、少ない資金でも建玉操作がしやすくなるからでしょうか。
各業種を代表する01銘柄や、日経225採用銘柄、JPX400採用銘柄から選定するとよいでしょう。
林先生は、自分の生活の中で身近な銘柄を選ぶとよいとしています。
買い物が好きであれば「三越伊勢丹HD(3099)」などですね。
避けるべき銘柄
うねり取りで避けるべき銘柄についても紹介されています。
- 仕手株
- スタンダード・グロース市場
- IPO(新規公開株)
- テーマ株
上記の銘柄は、出来高が少なかったり、荒い値動きをする傾向にあります。
そのため、利益を得るよりも損する可能性の方が高いため推奨できません。
うねり取りの手法
うねり取りの細かい手法について解説します。
本書で書かれているうねり取り手法はとてもシンプルです。
- 買いで利益を得る場合
- 売りで利益を得る場合
それぞれについて解説します。
買いで利益を得る場合
買いで利益を得る場合の基本的な考え方は、以下のとおりです。
3ヵ月下げてきたら、1度目を買ってみる。
上げに移りそうであれば、2度目を買ってみる。
本書では、あまり細かい売買手法が記載されていません。
うねり取りは、自身が持つ「株価の変動感覚」と「分割取引の技術」による手法のため、特に前者の言語化は難しいのでしょう。
しかし林先生は、「あまり良いところを狙わずに、気楽に2回に分割する」ことが大事とされています。
「チャートがこうなったら買い」など厳密なシグナルに頼らずに、まずは「分割」して一発買いしないことが重要といえます。
1つポイントとしては、「底の動きは天井ほど激しくないため、3日程続落した翌日に買うとよい」ということです。
売りで利益を得る場合
売りで利益を得る場合も、基本的に買いと同じです。
3ヵ月上げてきたら、1度目を売ってみる。
下げに移りそうであれば、2度目を売ってみる。
売りのポイントとしては、「天井は値動き激しいため、なおさら気楽に売ってみること」をおすすめされています。
うねり取りの練習方法
本書で紹介されている、うねり取りの基礎を習得するための練習方法は以下のとおりです。
- 銘柄を選定する
- 単発売買をする
- 分割売買をする
1. 銘柄を選定する
うねり取りは監視銘柄を1つに絞り、その銘柄の値動きの癖を感覚として身に着けて取引します。
そのため、できるだけ時価総額が大きく、出来高の多い、値動きの安定した銘柄を選定します。
選定基準については、前項をご覧ください。
2. 単発売買をする
1度の買い→決済(1度の売り→決済)の取引をしてみます。
2~3回試してみたところで、すぐに「3. 分割売買」に移ることが推奨されています。
単発売買によって、銘柄へ慣れてみるのが目的でしょう。
3. 分割売買をする
このフェーズまで来たら、あとは以下の取引をひたすらに続けます。
- 3ヵ月下げてきて、下げ止まりそうな感覚があれば1回目を買ってみる
- 翌日でも、数日後でもいいので、2回目を買ってみる
- 決済は一括
この工程は5年でも10年でも、好きなだけ繰り返してよいとされています。
一口に「分割売買」といっても、1回目の回より下げたときに買えば「ナンピン(難平)」となります。
また、1回目の買いより上げたときに買えば「買い乗せ」の技術を習得できます。
2回の分割売買に慣れてきたら、3分割の買いを試してみたり、1度の買いの枚数を変化させて、不均等売買を試すのもよいでしょう。
株式投資とは「分割売買」をいかに極めるかなのです。
うねり取りに必要な資金
うねり取りをするのに必要な資金としては、少なくとも200~300万円とされています。
はじめは少額から試していくことは重要ですが、あまりに資金が少ないと、取引が縮こまり将来伸びていかないからだそうです。
本書への疑問
本書を読んでいて疑問を感じたことについてまとめます。
- 分割売買をする理由について
- うねり取りの損切について
分割売買をする理由について
分割売買をする理由については、あまり名言されていなかったため、筆者の見解も含めて以下にまとめます。
- 初めてのエントリーに時の不安を払拭するため
- 値動きの感触を探るため
- 買いの平均値をさげるため
初めてのエントリーに時の不安を払拭するため
将来の株価を正確に予測することは不可能です。
そのため、初めてエントリーするときは、必ず不安が付きまといます。
その不安を払しょくするために、本玉(最終的に建てたい玉の合計)を分割して、値動きの様子を図れる分割売買が有効になってきます。
値動きの感触を探るため
分割売買によって、選定した銘柄に対しての値動きの感触をつかめます。
初めての銘柄に挑む場合、まずは1度の試し玉をいれることで、その銘柄を注意深く観察するようになるでしょう。
保有していない銘柄より、保有している銘柄の動きを強く意識するようになるのは当然です。
一発買いをせずに、試し玉として1度少ない枚数でエントリーすることで、銘柄の値動きの感触を掴めます。
初めてのエントリーに時の不安を払拭するため
分割売買によって、購入価格の平均値を下げることができます。
1発買いをした場合、その後は1度目の購入価格より、株価が上がらなければ利益を得られません。
しかし、分割売買の場合は、1度目の購入価格より株価が下げてしまっても、さらに低い価格で2度目を購入すれば、持ち株の平均取得株価は下がります。
そのため、2度目の購入価格から少し上昇した価格で一括決済すれば、損失なしで逃げることも可能です。
分割売買をすることで、購入価格を操作する事ができるのです。
うねり取りの損切について
本書では、損切りについては下記のとおり記載がありました。
・「まずかったな」という”感じ“で切る
・”感じ”の根拠を詮索しない
・とにかく玉を切って休む
以上の通り、あまり明確な基準は設けられていませんでした。
そのため筆者の個人的な見解をのべておきます。
一つの明確な基準としては、「前の安値を割った段階での損切」でしょう。
少なくとも、1度目の買い時点でどの程度損失を許容できるかを考えて、損切ポイントを設定しておくことが重要です。
本書で記憶に残る部分
本書を読んでいて、個人的に今後の為になりそうな部分をまとめます。
- 信用取引は損失を抑えるための保険機構であり、少ない資金で大量に売買できる投機売買ではない
- 余計な先入観をいれないためにニュースや新聞は読まない
- 株のチャートをグラフと思わずに風邪を引いたときの体温のチャートとしてみる
- 林先生は取得平均価格をあまり気にしていなかった
- 分割回数の増加、枚数の増加によって、利益が増加し株で生活していけるようになる
日々取引していると、どうしても目先の値動きに惑わされ、近視眼的になりがちです。
しかし、本書を読んでいると、あまり難しいことを考えずに、できるだけシンプルにやさしい手法で取引すればいいのだなと感じさせてくれます。
3ヵ月程下がってきて、チャートが少し横ばいになってきたら、分割して少しずつ買ってみる。
その程度に気楽に取引を考えてみるのも重要なのだと感じました。
まとめ:うねり取りの基礎が分かる
書籍の中では、林先生と生徒との実際のやりとりが紹介されています。
基礎を理解せず言い訳や屁理屈を並べる生徒への、林先生の痛烈な説教がなんとも面白い作品です。
24年前に発売された書籍なので、現在の相場環境には合っていない部分が多々あります。
しかし、うねり取りとは何たるか、を知るためには十分な書籍です。
うねり取りの第一人者である林先生とはどのような人なのか、うねり取りの基礎を知りたい、という方は一度手に取ってみてはいかがでしょうか。